日本話し方センター社長・横田章剛のブログ

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2020年2月18日固有名詞を活用する

先週に続いて本のネタからお話を始めます。

今、「アメリカ海軍に学ぶ『最強のチーム』のつくり方」という本を読んでいます。



著者は、アメリカ海軍有数のやる気のない駆逐艦の艦長に就任しました。

そして、わずか6ヶ月でその駆逐艦を全米一と評価されるほどの優秀な軍艦に建て直しました。

この本には、その組織改革の具体的な方法が書かれています。

この本に次のような一節があります。

著者はこの駆逐艦をアメリカで最高の戦艦にしたい、そしてそれを「正しいやり方」で成し遂げたい、と考えます。

その正しいやり方かどうかをチェックするために、自身に問いかける言葉が以下の一文です。

「もし、このことが明日の『ワシントン・ポスト』の一面に載って全米中に知られることになったら、それを誇りに思うだろうか? それとも、恥ずべきことだと思うだろうか?」

私がこの一文を読んで気付いたことは、「ワシントン・ポスト」という固有名詞の持つ説得力です。

 

ワシントン・ポストは、アメリカでは、世界的影響力を与える「高級紙」で読者も高学歴層が大半とされている新聞です。

そうした権威のある新聞に自分のすることが載ったとして、堂々としておられるだろうか?というのが著者の自問自答の趣旨です。

日本人の私でも名前は知っているくらいですし、アメリカでは格式の高い新聞なんだな、ということはわかります。

もし、この文の「ワシントン・ポスト」を単に「新聞」としてしまうと、どうでしょうか?

アメリカ人なら、全米中に知られる新聞といえば、ニューヨーク・タイムスかな、USAトゥデイかな、と余計なことを考えてしまうかも知れません。

また、ワシントン・ポストという固有名詞から感じられるニュアンス、例えば権威がある、広く読まれている、という風合いも失われてしまうでしょう。

 

話し方でも固有名詞を活用すると分かり易い話になります。

例えば、

「すごく爽やかな感じの人に出会った」

と言うよりも、

「俳優の向井理のような爽やかな感じの人に出会った」

と言えば、より具体的に人物像がイメージできます。

良い話というのは、聞き手の頭の中で情景や人物などのイメージが描ける話です。

固有名詞は、聞き手がイメージを描く手助けをします。

 

また、何かを説明する上でも固有名詞を使うことは有効です。

例えば、

「B社は信用力のある会社です。なぜなら、大手メーカーの子会社だからです。」

と言っても「大手メーカーってどんな会社なのかな?」と、何となく曖昧ではっきりしない感じが残ります。

これを、

「B社は信用力のある会社です。なぜなら、パナソニックの子会社だからです。」

と言えば、聞き手はなるほど、それなら安心だろう、と瞬時に納得するでしょう。

 

固有名詞は、そのものが持つ様々なニュアンスを瞬時に伝えることができるので、うまく使えば、話に強い説得力をつけることができます。

スピーチや日常会話の中で意識してみてはいかがでしょうか。
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