日本話し方センター社長・横田章剛のブログ

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2021年11月18日面接では具体的なエピソードを話そう!

私はアタックス・グループのグループサポート本部という、総務・法務・人事・経理・インフラ整備など、会社の内部のあらゆることを取り仕切る部署の責任者を長年務めました。人事も担当していましたので中途採用面接ものべ300回以上行いました。その経験から面接での自己アピールの仕方や準備で大切なポイントが主に2つあると考えています。今回はその2つのポイントをご紹介します。



例えばこのようなやり取りがあったとします。人財採用に応募してきた人をYさんとしましょう。
私:「いただいた資料を見るとYさんは工夫しながら仕事をするのが好きなんですね」
Y:「はい。学生時代にアルバイトしている時から『これってもう少し簡単にできないかな』などと考えるのが好きでした」
私:「そうですか。実際に工夫した例はありますか?」
Y:「はい。バイト先で毎日店長が現金の残高を確認する時、お札や硬貨の数を数えて電卓で計算していたので、それをExcelで簡単にできるようにしました」
私:「なるほど。他にはありますか?」
Y:「ええ。私は常に工夫することを意識してきたので色々ありますが、一番記憶に残っているのは先ほど申し上げたExcel化の話です」

皆さんはこのやり取りをどう思われますか?
私は過去にもこうしたやり取りを何度も経験してきました。そしてその度に「残念だな」と思ってきました。
私が残念に思う点は主に2つです。

1つ目は、工夫した例の話がとてもあっさりしている点です。
私が面接で確認したいのは、応募者の人柄や価値観、志向、思考力などです。それらをできるだけ正確に知るために様々な質問をします。従って、何をしたかという事実を知りたいわけではありません。Yさんが言った現金の残高計算をExcel化したことについて言えば、次のようなことを知りたいのです。
・なぜそうしようと思ったのか
・その工夫をする上で気をつけた点はどういうことか
・工夫した結果店長の反応はどうだったのか
・その反応を見てYさんはどう思ったのか
こうしたことをこのエピソードの中で話してもらえると、Yさんの人となりや思考力などをうかがい知ることができます。上の問答ではそれが確認できなかったのです。

残念に思うことの2つ目は、他のエピソードが聞けなかったことです。
Yさんは他に工夫をしたエピソードを聞かれて他にはないと答えたのです。そうすると残念ですが、本当にこの人は工夫をする人だなという確信を持つことができません。本当に常に工夫をしているのなら、それに関するエピソードが3つ以上あってもいいはずです。それが言えないということは「本当はそれほど工夫をしている訳ではないな」と判断せざるを得ないのです。

エピソードを幾つか答えてもらえると私の頭の中にそれらの具体的な事実を集約した抽象概念ができてきます。そうすると、私はYさんのことをよりはっきりと理解できるようになります。
「ああ、Yさんは本当に工夫を色々としているな。そしてそれは少しでも人の役に立ちたい、と思っているからだな」という風に。
実際の面接でも「他にありませんか?」と質問しても答えが返ってこないことがよくありますのでこの点は重要な事だと思っています。

Yさんの例で示したように、採用面接で自分自身をきちんと理解してもらうには、まず過去のエピソード=事実をしっかりと集めることが必要です。人の役に立ちたい、チャレンジすることにワクワクする、など言葉で色々とアピールをしても、それを裏付けるエピソード=事実がないと相手は本当にそうなのか判断が出来ないのです。しかし過去のエピソードはすぐには思い出せません。常に意識して時間をかけてじっくりと思い出してください。そしてその時の気持ちや考えをしっかりと言葉にしてください。そうすれば格段に説得力のある話ができるようになります。

日本話し方センターのベーシックコース2日間集中セミナーオンライン短期集中トレーニングコースでは、上に述べたように具体的なエピソードをもとにしたスピーチをすることで話し方のトレーニングを行っています。スピーチのネタは体験談が一番話しやすいし、聞き手にも聞き応えのある話になります。なので、体験談のネタをたくさん集めるようお伝えしています。そして、そのネタにおける当時の気持ち、今振り返って考えていることを入れて話してくださいとお願いしています。面接やスピーチは、あなたが何を感じ、何を考えたのかを話すことがとても大事です。これらがない話は単なる報告なのです。

話し方を上達させたいと思われている方はぜひ受講をご検討ください!
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