日本話し方センター社長・横田章剛のブログ

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2020年1月31日全社員一丸って何?


先日、これからあることを組織として活動していこう、というキックオフミーティングがあり、私も参加しました。

その場に企画案として提示された資料に、

「この活動は、全社員が一丸となることを狙いとする。」

という一文がありました。

これを見た私は、

「あの~、全社員一丸というのは、具体的にどういう状態でしょうか?」

と質問しました。

すると、資料の作成者は

「みんなが同じ思いで働いている、というイメージです。」

と回答してくれました。

私が、

「なるほど。もう少し確認させてください。同じ思いというのは何に対してですか?」

と重ねて確認すると、

「ん~。お客様に対して、ですかね・・・」

と少し考えるような感じで答えてくれました。



 

この例に出てくる「全社員一丸」という言葉は、かなり抽象度が高いものです。

企画を立案する場合などで、こうした言葉を書いたり、話したりすることがあります。

そして、多くの人は、こうした言葉に特に引っかからずに読んでしまうと思います。

しかし私は、こうした抽象度の高い言葉は注意して使わねばならないと思っています。

 

話し方教室では、話はできるだけ具体的に、ということをお伝えしています。

何度かこのブログでも書いているとおり、人は話を理解し、納得する過程で、必ずその話をイメージ化します。

だから、イメージできるまで具体的に話をせねばなりません。

これはスピーチだけでなく、ビジネスコミュニケーションでも同様に重要です。

特に企画に関する資料や発言では、具体性はとても重要です。

何故ならば、企画は最終的に組織として行動を起こすために立案されるからです。

人間が行動を起こすためには、具体性は必須です。

最終的には、誰が、何を、いつまでに、どの程度、どういう手順で、というレベルまで決める必要があります。

当然ながら、最初の企画段階ではここまでの具体性は不要です。

しかし、活動の狙いが「全社員一丸」だ、という表現は最初にしても抽象度が高すぎて、メンバーが統一したイメージを持てません。

このままでは、今後の議論が進まない可能性があります。

こうした考えから、私は上のような確認をしました。

この例では、作成者も具体的なイメージがないまま企画書を書いたようですが、私の質問を通じて、もっと具体的にしないといけないと気付いてくれました。

そして、この後、狙いをより具体的にするための議論ができました。

 

どこまで具体的に話をすればいいのか、というのは場面によって異なります。

具体性を意識しすぎると、伝えたい趣旨には不要な細かいことまで話してしまい、話が長くなりかねません。

その時に応じて、適切なレベルで具体的に話す、ということは、とても重要ですが、意識しないとなかなか身につきません。

ぜひ日頃のご自身の言動を常にチェックしていただきたいと思います。
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