日本話し方センター社長・横田章剛のブログ

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2020年9月17日相手にきちんと動いてもらうには?

突然ですが、皆さんに息子さんがいて、その子の部屋がこんな状態だったとします。



これを見たとき、息子さんにどのように言うでしょうか?

A:「ちゃんと片付けなさい。」

B:「起きたら布団は元に戻しなさい。パジャマはタンスにしまいなさい。床に落ちているものは拾って片付けなさい。椅子は机の中に入れなさい。」

多くの方はAの「ちゃんと整理整頓しなさい。」と仰るのではないでしょうか。

しかし、それでいいかどうか、改めてAの言い方とBの言い方を比較して見たいと思います。



この2つの言い方を「抽象的か具体的か」という観点で考えてみましょう。

Aの言い方は、Bよりも抽象的です。

何をどうすべきかは全く言わず、ごく大まかなことしか言っていません。

従って、何が問題でそれをどうすればいいのかは、息子さんが自分で考えなければいけない、ということになります。

一方、Bの言い方は、Aよりもはるかに具体的です。

息子さんは、何をどうすればよいか考える必要はなく、言われたことをやればよい、ということになります。

 

この2つの言い方のどちらが適切かは、息子さんの理解度によります。

息子さんが中学生か高校生で、自分がどうすべきかわかっているのであればAの言い方でいいでしょう。

(実際に息子さんが、片付けよう、という気になるかどうかはここでは置いておきます。)

一方、息子さんが小学生で、何をどうすればいいか今一つちゃんと理解していない場合はBの言い方でないと問題は解決しません。

 

上の例は、息子さんに対する親御さんの言い方を取り上げましたが、この「抽象と具体」は、仕事上のコミュニケーションでも意識すべきことです。

細谷功さんが書かれた「『具体⇄抽象』トレーニング」という本に面白いことが載っていました。

それがこちらの図です。



仕事を依頼する人と依頼される人の認識の違いを図にしたものです。

 

依頼される人が抽象的な言い方でも自分で考えて仕事が出来るなら、依頼する人は抽象的な言い方でよく、「任せるのがうまい上司」と思ってもらえます。

また、依頼される人が具体的に細かな指示が欲しいと思っている場合で、依頼する人が細かな指示を出したときは、「面倒見のよい上司」と思ってもらえるでしょう。

図の黄色い部分は何れもコミュニケーションが噛み合っている場合です。

 

しかし、依頼される人が抽象的な言い方でよいと思っているのに、依頼する人が具体的な指示をしてしまうと、小うるさい上司だと思われてしまいます。(マイクロマネジメント)

また、依頼される人が具体的な指示がないと動けないのに、依頼する人が抽象的な言い方しかしないと、相手は「丸投げされた」と不満を持ってしまうでしょう。

 

このように、相手の理解度や能力に合わせて具体的に言うべきか、抽象的な表現でよいのかが変わってきます。

特に取引先やメンバーに仕事の依頼をする場合は、相手にきちんと動いてもらわないといけません。

そのためには、相手に合わせた「抽象と具体」のレベル感で話をした方が良いでしょう。
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